ビジネスとマーケティングの上り坂

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デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーション

 

 

デジタルトランスフォーメーションとは何か

 

ここ数年、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉をよく耳にするようになりました。

 

「企業のデジタルトランスフォーメーション」を一言で説明するならば、

 

「企業活動のすべてをデジタルベースにすること。あるいは、デジタルからアナログ、アナログからデジタルへとシームレスかつ柔軟に行き来できる事業体とすること」

 

となります。

 

少し観念的で分かりにくいかも知れませんが、もっとざっくり、

 

「ITベースで事業を運営すること。さらには、自らがIT企業になってしまうこと」

 

と言ってしまっても過言ではありません。

 

このように言うと、あなたは

 

「そんな馬鹿な」

 

と思うかも知れません。しかし、考えてもみてください。世界最大の書店であるAmazonは、書店であると同時にIT企業でもあります(もっとも、現在のAmazonは「書店」という枠組みだけでは括れませんが)。

 

巨大アパレル企業となった、ゾゾタウンを運営するスタートゥデイ社も、アパレル会社であるとともに、IT企業でもあります。

 

巨大フリーマーケット運営会社であるメルカリも、IT企業ですよね。

 

このように、各業界で勝ち残っていくためには、望むと望まざるとに関わらず、自らがIT企業になっていくしか選択肢はありません。

 

それが、企業のデジタルトランスフォーメーションなのです。

 

 

 

日本企業のデジタルトランスフォーメーションへの対応状況

 

国内でも、誰もが名前を知るような超一流企業については、

 

「全社を統括するデジタル組織を作った」

「CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を外部から招へいした」

 

など、様々な情報がメディアを賑わしています。

 

一方、それ以外の我が国の大半を占める準大手・中堅中小の企業においては、どの程度、デジタルトランスフォーメーションへの対応が進んでいるでしょうか。

 

残念ながら、そのような進捗度合いを示すデータは手元にはないのですが、著者が中小企業へのコンサルティング活動を行うなかで見えてくるのは

 

「ITやデジタル化への対応を進めていかなければならないのは分かっているが、どのように進めてよいのか分からない。そもそも、デジタルトランスフォーメーションとは何を目指せばよいのだろうか」

 

と考えている(というより、困惑している)経営者が多数存在する、ということです。

 

いや、上記のように、危機感を持っている経営者は、まだ良い方です。

 

一部の経営者のなかには

 

「デジタル改革って大手企業の話だろ。うちの業界、特に当社のような中小企業には、関係のない話だよ」

 

など、他人ごとのように考えている方もいらっしゃいます。

 

しかし、これは大きな誤りです。

 

詳細は後述しますが、どのような業界でも、参入障壁を易々と乗り越えてデジタルディスラプター(業界構造の破壊者)が突然現れる可能性はありますし、そうしたディスラプターは、大企業ではなくベンチャー企業であることがほとんどです。

 

うかうかしていると、自社より規模の小さい会社に、根こそぎビジネスのルールを変えられてしまい、経営悪化してしまう可能性があるのです。

 

 

 

デジタルトランスフォーメーションが必要とされる背景

 

現在、社会に最も影響を与えている産業の1つが、IT業界である、という考えに異論のある人はいないでしょう。

 

時代によって、社会を牽引する産業は異なります。高度経済成長時代は、製鉄業や繊維産業が牽引していましたし、ITの前は自動車産業が、そうでした。

 

また、同一の産業の中では、主流となる技術も、時代とともに変化します。

 

音楽業界ではレコードからCD、家電AVではVHSビデオからDVD、IT業界では、真空管からトランジスタ、そしてICチップへと、主流となる技術は変っていきました。

 

以上のように、先発の技術が後発の技術に取って変わられる時、ほとんどの場合、両者は技術的に無関係のものです。

 

たとえば、レコードプレーヤーからCDプレーヤーへ、市場では、あっという間に置き換えが起こりましたが、その変化を予測できなかったレコード針のメーカーの多くは潰れていきました。

 

レコード針に関する、どんなに優れた技術を持っていたところで、CDプレーヤーの製造・販売には、まったく役に立たないからです。

 

以上のように、

 

「ある業界の中で、古い技術(プレーヤー)が、新しい技術(プレーヤー)に淘汰される」

 

と言うことは、これまでも起こって来ました。

 

そのため、多くの企業は、MOT(技術経営)という考え方を取り入れ、

 

「必要な技術を計画的に育成できるようにマネジメントする」

 

ということに取り組んで来ました。

 

こうした考え方は、これまで、一定の効果を挙げてきた、と言えるでしょう。

 

しかし、現在では、まったく異なる様相になって来ました。

 

それが

 

「IT業界のプレーヤーが、デジタル技術を駆使して、様々な業界に新規参入し、既存のプレーヤーにとって重大な脅威となる」

 

ということです。

 

このような新規参入者のことを、「デジタルディスラプター(デジタルによる破壊者)」と呼びます。

 

デジタルディスラプターの中には、みなさんもよくご存じの企業もあります。

 

宿泊(民泊)業界へ参入したAirbnb、輸送(タクシー)業界へ参入したUber、そして、金融業界へ参入した無数のFinTechベンチャー。

 

彼らは、従来の産業の非効率な部分を見つけ、そこをデジタル技術で巧みにカバーできる戦略を持って、異業種へ参入して行きました。

 

彼らの中には、巨大企業となっているものも多くありますが、参入当初は、いずれも小さなベンチャー企業でした。

 

しかし、彼らが提供するサービスが魅力的なため、多くのユーザーを獲得しました。また、一部には規制が存在していましたが、ユーザーにとってメリットのあるサービスということで、当局が重い腰を挙げざるを得ないケースもありました。

 

今やIT業界のプレーヤーは、すべての業界の企業にとって、潜在的な脅威となっているのです。

 

もちろん、経営資源の劣るITベンチャーが、次々と変革を実現していることには、理由があります。

 

それは、調査会社IDCが提唱する「第3のプラットフォーム」の存在です。

 

IDCは、デジタルトランスフォーメーション(DX)について

 

「DXとは、企業が『第3のプラットフォーム』技術を活用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」

 

と位置付けています。

 

そして、第3のプラットフォームとは、「モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウド」の4点を指します。

 

実際に、Uber、Airbnb、いくつかのFinTechベンチャーは、スマートフォン(モバイル)というインフラが社会の人々に行き渡っていたからこそ、短時間に大きな変革を成し遂げた、と言えます。

 

おそらく、このDXの大きな波は、これからも、もっと多くの産業へと波及していくはずです。

 

もちろん、あなたの会社の業界も例外ではないでしょう。

 

しかし、黙ったまま、IT業界から参入してくるデジタルディスラプターにされるがまま、と言うわけには行きません。

 

彼らに対抗するためには、「自らが、デジタルディラプターとなる」という方法が残されています。

 

一時的に、従来の事業とカニバリズムが発生するかも知れませんが、新しい商品・サービスの方が顧客にとって価値のあるものであれば、従来の商品・サービスは、いずれ淘汰されます。

 

選ぶべき道は1つしかないのです。

 

あなたの会社自体がIT企業となり、商品・サービスの価値を、ITを利用して高め続けること以外に生き残る道はない、と考えるべきです。

 

その際、第3のプラットフォームである「モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウド」を上手く活用すれば、さらに魅力的な商品・サービスに仕上げることができるはずです。

 

そして、その生き残る道こそが、デジタルトランスフォーメーションということになります。