ビジネスとマーケティングの上り坂
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こんにちは、西です。
冒頭からPRで恐縮ですが、Webメディア「businessnetwork.jp」に以下の連載記事が公開されました。
「ディープラーニング」など先進AIの活用において、官民一体となった日本の攻勢が始まる!
こちらの記事では、Google/Amazon/Appleなどのアメリカ巨大プラットフォーマーが研究開発で先行する先進AI技術「ディープラーニング(深層学習)」について、これまでのAI開発の流れを踏まえ、分かりやすく説明しています。
また、日の丸企業が米国勢をキャッチアップするために、我が国の官民一体化によるAI+ビッグデータ活用へ向けた体制が作られていますが、その状況についても説明しています。
関心のある方は、ぜひ読んでみてください。
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さて、今回のブログ記事では、連載の内容に関連しつつ、連載では掲載しなかったことを書きたいと思います。
それが、この記事のタイトルにある、
先進技術・ディープラーニングにより、AI(人工知能)は『心』を持つようになるか?!
ということです。
「強いAI」と「弱いAI」
人工知能における議論の1つに、「強いAI」と「弱いAI」というものがあります。
「強いAI」とは、人間の脳と同じ仕組みを作り出し、人間と同じように考えることができる、知能を持ったAIを作ろうとする考え方です。「汎用的なAI」と言えるかも知れません。
「弱いAI」とは、仕組みにはこだわらず、「人間の知的活動と同じことができるものがAIである」という考え方です。
弱いAIの例としては、あらかじめ「多くの質問と回答のセットを記憶させたプログラム」などが挙げられます。
このようなプログラムは、とても人間の脳を真似ているとは言えませんが、誰かがプログラムに質問をした際、その質問があらかじめセットされているものであれば、正しい答えを返すことができるでしょう。
強いAIをめざすディープラーニング
現在、先進AI技術として注目されるディープラーニングは、「強いAI」を志向しているものです。
つまり、人間の脳を模倣しようとしています。
ご存知の方も多いと思いますが、人間の脳は、千数百億個の神経細胞(ニューロン)が複雑なネットワークを作っています。ニューロンは、シナプスと呼ばれる「他のニューロンとの接合部」を持っています。1つのニューロンにつき、平均数万個のシナプスを持っています。
千数百億個の神経細胞(ニューロン)は、それぞれ数万個の別のニューロンとつながっている複雑なネットワークを作っているのです。
何かしらの刺激を受けた脳は、この複雑なネットワーク上を電気信号が走り回ることにより、様々な知能活動を行っています。
人間の神経細胞ネットワークを模倣したニューラルネットワーク
続いて、ディープラーニング技術の仕組みです。
「強いAI」を志向するディープラーニングは、人間の脳の神経細胞ネットワークを人工的に再現しようとしています。
それが、「ニューラルネットワーク」と呼ばれるものです。
連載記事の方に書いた「Googleの猫」の研究の場合、ニューロンに相当するノード(CPU)を1万6,000個ほど接続したニューラルネットワークを作り、Googleは実験を成功させています。
そもそも、人間の『心』とは何なのか?
近年、脳科学の進展とともに、脳の構造の解明が進んできています。
人間の知的活動は、脳の神経細胞の巨大ネットワーク上で複雑に電気信号が走り回り、情報処理が行われることで実現しています。
そこでは「何が起きているのか」は分かるのですが、
「なぜ、それが人間の思考や記憶、感情など、『心』や『意識』を生み出しているのか」
については、まったく分かっていません。
実は、ディープラーニングのニューラルネットワークも同じです。
Googleは1万6,000もの擬似ニューロン(ノード)によって構成されたニューラルネットワークを作り上げました。
そのニューラルネットワークに大量の画像を読み込ませたところ、誰に教えられるわけでもなく、AIが自ら「猫」という概念を獲得したのです。
ニューラルネットワークにおいては、
「それぞれのノードの間を、どのように接続するか」
「各ノードは、どのような刺激が入ってきたら、どのような刺激を出力するか」
について、ニューラルネットワーク自身が調整していきます。
そのため、「GoogleのAIが、誰の助けも借りずに『猫』の概念を認識した」と言っても、
「なぜ認識できたのか?」
「その仕組みは?」
という点については、ニューラルネットワークを作った研究者でさえ、きちんと説明できないのです。
つまり、「人間の脳」と「ディープラーンニング技術」の両方に共通して言えること、それは
複雑なネットワークを作り、そのネットワーク自体に各種パラメータの調整をさせることにより、パターン認識など、知的活動と言えるものができるようになる
ということです。
AI(人工知能)は心を持つのか?
現在のAIブーム(第三次AIブーム)を牽引する科学者の一人である東京大学准教授 松尾豊氏は、その著書「人工知能は人間を超えるか」の中で、「AIが心を持つかどうか」について、次のように述べています。
私の考えでは、特徴量を生成していく段階で思考する必要があり、その中で自分自身の状態を再帰的に認識すること、つまり自分が考えているということを自分でわかっているという「入れ子構造」が無限に続くこと、その際、それを「意識」と呼んでもいいような状態が出現するのではないかと思う。
発言の中で出てくる「特徴量」とは、何かしらの対象を認識するにあたり、「対象のどこに注目すればよいのか、そのポイント」のことです。
かなり乱暴ですが、松尾氏の発言を元に、私なりの解釈をするとすれば、
「情報処理において、対象の概念やパターンを認識する際には、『思考』や『意識』といったものがあった方が処理が上手く行く。だから、思考や意識が発生する」
ということになります。
そして、これは人間の脳も同じことではないでしょうか。
「なぜ、人間の脳は、意識があったり、思考したりするのか」
という問いに対する答えは
「人間の脳が複雑な情報処理をするあたり、思考や意識があった方が、情報処理が上手く行くから」
ということです。
何か、身も蓋もない言い方に聞こえるかも知れませんが、「意識」や「思考」というものは、自律的に高度な情報処理を行う際に使えるツールとして、進化の過程で発生した、と考えています。
そのような意味では、今後、さらに巨大な人工のニューラルネットワークを構築することにより、人工知能も「意識」や「思考」というツールを自ら獲得する日も近いのではないか、と私は考えています。
さて、現実には、どうなることでしょうか。
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